風よ雲よ 上・下
(かぜよくもよ・じょうげ)
陳舜臣
(ちんしゅんしん)
[中国]
★★★☆☆
♪陳さんの海洋時代小説というと、『戦国海商伝』(講談社文庫)を思い出す。あちらは、毛利家ゆかりのものが主人公だったが、こっちは、大坂夏の陣の長宗我部軍の落武者が主人公。
明の衰退、清の勃興、南海の狂乱…、激動の中国を舞台に、豊臣家の遺児と財宝をめぐる謎も絡み、物語は波瀾万丈に展開していく。明の崇禎帝、呉三桂将軍、反乱軍の李自成、海賊鄭芝竜、傾国の美人・陳円円ら当時の著名人も登場する壮大な歴史ロマンだ。中国史のお勉強的でなく、ちょっと、伝奇めいているのもとっつきやすくていい。
物語●明末の天啓三年、ポルトガル商館や倉庫が立ち並ぶマカオ。大坂夏の陣の落武者・安福虎(あんふっこ)こと、安福虎之助は、のちの南海の大立者・鄭芝竜(ていしりゅう、鄭成功の父)と出会った。そのとき、虎之助は、十歳ばかりの利口そうな少年と、四十がらみの僧侶と一緒だった…。
目次■マカオ南湾/落武者/のりまえ/日本みやげ/二人一官/闇の武士/傾斜/美少女/秘策無尽/清流濁流/波浪と黄塵/採蓮の人/金陵の春(以上上巻)|覇者の庭/安平城小景/夢の華/鳴動/東南に流る/南北の道/万里の愁/江湖流落/春夢/黄の旋風/英雄多情/劫火/風雲の外(以上下巻)