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西行と清盛

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西行と清盛西行と清盛
(さいぎょうときよもり)
嵐山光三郎
(あらしやまこうざぶろう)
[平安]
★★★★☆☆

以前に、兼好法師を主人公にした、『徒然草殺しの硯』(角川文庫・絶版)というとんでもない時代小説を読んだことがある。細部は忘れてしまったが、教科書で習ったエライ人のイメージを粉砕する面白い作品だった記憶がある。

本作品の中で、西行も清盛も、作者を彷彿させる「不良中年」として描かれているのが、いい。昔から平家嫌いだったが、清盛がいっぺんで好きになってしまったほど。拳法の達人(火坂雅志さんの作品にも、K-1戦士ばりの西行を描いたものがあるが)として登場する、西行が実にかっこいい。青春していたり、山田風太郎さんの主人公ばりのアクションを見せたりと、思わずニンマリしてしまう。プロレスばりの反則技を随所に使いながらも、朝廷内の権力闘争、保元・平治の大乱、源氏と平氏の興亡など、平安末期の歴史を一気に読ませてくれる。

作者が傾倒し、思い入れたっぷりということで、西行の歌の引用が抜群にうまい。

物語●「西行の歌はめちゃくちゃうまい。絶品である。(略) ここまで日本人を感動させ、だましてしまう作家とはナニモノであるか。かなりのワルを通りこした超凄玉ワルではあるまいか。これこそ文芸の王道である。」(あとがきより)
は「西方の彼岸(死地)を行く」という意味で、西行と名乗り、出家し、旅から旅へ、漂白の歌人という虚構をつくりあげた、平安文壇の巨人を、北面の武士の同僚だった平清盛との交流を通して描く時代小説の快作。

目次■第一部 一、闇の格闘/二、路上競馬/三、菊花宴/四、赤漆の矢/五、不義の情欲/六、義清、出家する/七、嵯峨の仙人たち|第二部 ここで閑話/一、東国への旅立ち/二、闇法師七人衆/三、清盛、矢を放つ|第三部 ふたたび閑話/一、多子立后の宴/二、歌を詠む日々/三、忠通義絶/四、西行、暗闘す/五、密命|第四部 またまた閑話/一、戦力分析/二、捨てた妻子/三、白河殿炎上/四、悪左府の最期/五、処刑の嵐/六、和歌の往来/七、身代わり/八、平治の乱|第五部 閑話休題/一、鹿ケ谷事件/二、奇怪な僧/三、二見ヶ浦の庵/四、怨霊の炎/五、わずか三十一文字|あとがき/文庫版あとがき/解説 清水義範

カバー:南伸坊
解説:清水義範
時代:保延元年(1135)
場所:油小路裏、西京極大路、西小路、嵯峨、天竜川、小夜の中山、石渚島、六波羅、高野山ほか
(学陽書房人物文庫・700円・99/11/22第1刷・373P)
購入日:99/11/23
読破日:99/12/01

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