市井

つましい生活の中で、ささやかな幸せがある

藤沢周平さんの『橋ものがたり』を読み直している。タイトルどおりに江戸の橋を舞台にした10の短編を収録。十年以上前に一度読んでいるはずなのだが、ストーリーをすっかり忘れていて、初読のようなワクワク感を抱きながらページを繰っている。

「五年経ったら、二人でまた会おう」

幸助とお蝶の交わした約束。しかし、若い二人にとって、五年は平穏な月日ではなかった。それぞれが抱える不安と後悔、そして相手を思う強い気持ち。約束の場所は萬年橋。映画のワンシーンのよう。一話目で、いきなり涙腺が開いてしまった。

それぞれの話では、市井の普通の人(中には借金のために男と寝ることを強いられる女も含まれるが)が主人公。現在の境遇を愚痴ることもなく、それぞれが誠実に真摯に生きている。そんなつましい生活の中で、本当にささやかなことに生きる喜びを見出したり、人を思いやったりする姿が感動的。

忙しい生活の中で失くしてしまったものを気づかせてくれる。心の癒しになる作品集だ。

橋ものがたり 新装版


5年前の「ほぼ日刊時代小説」を読みながら

空いている時間を使って、iPadで読める電子出版コンテンツづくりを行っています。

まずは、過去の「ほぼ日刊時代小説」のブログエントリーをもとに電子出版用のデータづくりを進めています。編集作業をしながら、「ほぼ日刊時代小説」を始めた当初のエントリーを読んでいると、エントリーを書いたころのことが鮮やかに思い出されて懐かしくなります。

何よりも驚くのは「ほぼ日刊」の言葉通りに毎日ブログを書いていたことです。我ながら実にマメに、そのとき読んでいた本のことを書いていました。

さて、今は、調べものを兼ねて、藤沢周平さんの『橋ものがたり』を読んでいます。この作品で登場する橋の場所を確認しつつ。

「約束」萬年橋。「小ぬか雨」親爺橋、荒布橋。「思い違い」両国橋、山城橋。「赤い夕日」永代橋。「小さな橋で」町外れの小さな橋。「氷雨降る」大川橋。「殺すな」永代橋。「まぼろしの橋」笄橋、鳥越橋。「吹く風は秋」猿江橋、弥勒寺橋、両国橋。「川霧」新大橋、永代橋。

橋ものがたり (新潮文庫)


大火が変えた人生模様を描く捕物小説

北原亞以子さんの『消えた人達』を読みました。十手持ちで鰻屋の若旦那の爽太が活躍する捕物シリーズ「爽太捕物帖」の第2弾ですが、1作目の『昨日の恋』を読んでいなくても楽しめる作品になっています。

この本の読書録は「ほぼ日刊時代小説」に移しました。
http://d.hatena.ne.jp/jidai-show/20100417

消えた人達―爽太捕物帖 (文春文庫)

昨日の恋―爽太捕物帖 (文春文庫)


井上ひさしさんの訃報

作家の井上ひさしさんが3月9日、肺がんのため死去。75歳でした。

井上さんといえば、中高生の頃にそのユーモア小説(『ブンとフン』や『青葉繁れる』など)を愛読していました。また、大学生のころ、「イーハトーボの劇列車」などの芝居を見たことも思い出されます。

江戸の戯作者の世界を描いた『手鎖心中』や伊能忠敬を描いた『四千万歩の男』など、いくつかの面白い作品を発表されています。しかしながら、時代小説の作家としてのイメージがあまりありません。今まであまり気にしてこなかったのですが、不思議です。

個人的には、戯作者のエピソードを綴った『戯作者銘々伝』が、今、読み返してみたい本のひとつです。








Wikipediaなどネットでは、井上さんのプライベートな面のネガティブな話が出てきて、そちらのほうが耳目を集めてしまったようで、残念です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E4%B8%8A%E3%81%B2%E3%81%95%E3%81%97


北の湊町・水潟を舞台にした傑作時代小説集

北重人(きたしげと)さんの『汐のなごり』を読み終えました。「海上神火」「海羽山」「木洩陽の雪」「歳月の舟」「塞道の神」「合百の藤次」の六つの短編を収録した作品集です。

この本の読書録は、「ほぼ日刊時代小説」に移しました。
http://d.hatena.ne.jp/jidai-show/20100409

汐のなごり (徳間文庫)


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