「朝日時代小説大賞」受賞作の電子版が期間限定無料公開

暴れ宰相 徳川綱重 江戸城騒乱朝日新聞出版では、3月18日(土) 0時より2週間限定で、『慶応三年の水練侍』をはじめ、「朝日時代小説大賞」出身作家による、この春おすすめの時代小説3作品の電子版を、Kindleストア、楽天kobo、BookLive、ReaderStore等の電子書店にて無料公開するキャンペーンを実施します。

【対象作品】
天野行人さんの『花天の力士 天下分け目の相撲合戦』(朝日新聞出版刊)〈第8回最終候補作〉

藤原道長が栄華を極めた平安時代。政敵の右大臣藤原顕光の姦計にはめられた左大臣道長は、例年内裏で行われる相撲節会において、それぞれが選んだ最強の相撲人による決闘を約束させられる……。


片山洋一さんの『島津の陣風 義久の深謀、義弘の胆力』(朝日新聞出版刊)〈第6回優秀作受賞者最新作〉

慶長五年(1600)九月十五日、関ケ原。勝利を確信した家康本陣めがけて、島津義弘率いる千五百の隼人たちが駆け抜けた!  世にいう“島津の退き口”である。生きて薩摩に戻ったのは僅かに八十余名。改易を狙う徳川と本領安堵を図る島津との虚々実々の駆け引きが始まる……。


木村忠啓さんの『慶応三年の水練侍』(朝日新聞出版刊)〈第8回大賞受賞作〉

慶応三年、津・藤堂家の砲術師範・市川清之助、突如として水術試合を要求される! 十七年前の事故で父親を亡くした谷口善幸は、清之助を逆恨みして、水術訓練時の度重なる嫌がらせに加える。清之助と善幸の遺恨は、水術(競泳)決着に……。


三者三様の魅力に満ちた、新鋭作家の時代小説が味わえる、楽しみな企画です。電子版(電子書籍)が初めてという方もお試しいただくチャンスです。

【実施書店】
3月18日(土)0時配信開始、詳細は各書店サイトをご覧ください。

・Kindleストア
・楽天kobo
・BookLive
・ReaderStore

キャンペーン対象の電子版には、「無料版」「期間限定 無料お試し版」と本の画像に明記されていて、通常の電子版と価格表示が違っているので、注意してお選びください。

■Amazon.co.jp
『花天の力士 天下分け目の相撲合戦』(Kindle版 期間限定無料お試し版)
『島津の陣風 義久の深謀、義弘の胆力』(Kindle版 期間限定無料お試し版)
『慶応三年の水練侍』(Kindle 期間限定無料お試し版)


美人女将お園の料理が人々の心を癒す、江戸人情料理帖。

縄のれん福寿 細腕お園美味草紙有馬美季子(ありまみきこ)さんの文庫書き下ろし時代小説、『縄のれん福寿 細腕お園美味草紙』(祥伝社文庫)を紹介します。

薄切りにして煮た蛸を、炊き上がる直前の飯に混ぜ込んで、汁を掛ける。それに刻んだ大葉を散らせば、ほんのり桜色に染まったご飯の出来上がり。
縄のれん〈福寿(ふくじゅ)〉を営む美人女将のお園は、優しさ溢れる料理で訪れる人々の心を癒す……。


時代は文政五年(1822)、日本橋小舟町の通称“晴れやか通り”にある、小料理屋〈縄のれん福寿〉。福寿は、女将のお園が女一人で切り盛りをしていて、常連客たちで賑わうお店です。

お園は二十歳の時に嫁に行ったが、三年も経たずに亭主だった料理人の清次が失踪するという過去を持っています。
理由がわからない清次の失踪で、お園はやり場のない思いから自分を責める日々を送り、心労と厳しい寒さがたたり、ある日、遂にからだを壊して道端で倒れてしまいます。
このまま死んでしまってもいいとさえ思ったお園を、通りすがりの見知らぬ老婆が助け、からだを優しく撫でて温め、夜鳴き蕎麦を御馳走してくれます。

 老婆は名前を告げずに去っていったが、温かな手は忘れたことがない。
 そして、老婆に御馳走になった一杯の蕎麦が、お園を変え、力をくれた。
――食べ物は、ただお腹を満たすだけのものではない。心に力を与えることだって出来るんだ。私は、あの蕎麦に力をもらった。
(『縄のれん福寿 細腕お園美味草紙』P.27 より)


失踪から一年が経った頃にお園は日本橋へ来て、仕舞屋を借り受けて店〈福寿〉を始めました。〈福寿〉を開いて二年が経った頃、店の前で倒れた若い娘・お里を助けるところから物語は始まります。

そして、今日も福寿には、悩みを抱えた者や生きることに苦しさを覚えた者、癒しを求める者が集います。
お園の料理は奇をてらったような独創的なものではありませんが、ひと手間かけて工夫を凝らし、愛情を込めて作られています。その想いは客たちの舌と胃袋を通して、心にすっとしみわたっています。料理の描写ばかりか人情描写も楽しみな江戸料理帖です。

2016年11月に刊行した本書が、著者の有馬さんの時代小説のデビュー作。2作目の『さくら餅 縄のれん福寿』もこの2月に刊行されたばかりで、今、気になる時代小説シリーズの一つです。

■Amazon.co.jp
『縄のれん福寿 細腕お園美味草紙』
『さくら餅 縄のれん福寿』


2016年の時代小説ベスト10・文庫/単行本を公開

「時代小説SHOW」の2016年時代小説ベスト10の【文庫書き下ろし部門】【単行本部門】を公開しました。

落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖【文庫書き下ろし部門】のベスト3は、
1位 『落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖』 千野みさき 光文社・光文社文庫
2位 『素浪人半四郎百鬼夜行』 シリーズ 芝村凉也 講談社・講談社文庫
3位 『虫封じ〼』 立花水馬 文藝春秋・文春文庫

です。
4位以下は→こちら

【単行本部門】のベスト3は、
1位 『家康、江戸を建てる』 門井慶喜 祥伝社
2位 『室町無頼』 垣根涼介 新潮社
3位 『くせものの譜』 箕輪諒 学研プラス

です。
4位以下は→こちら

⇒「時代小説SHOW」の時代小説ベスト10はこちら

隠密剣士のキャラクターが光る、映像化したい時代小説

青い剣 隠密剣士 夏木新太郎加藤文(かとうあや)さんの『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』(大和書房・だいわ文庫)は、2016年11月に刊行された文庫時代小説書き下ろしです。

「なぜ、父は死ななければならなかったのか――。
たまさか天から与えられた力のゆえに、並外れた剣の腕を持つひとりの若者。
友に恵まれ、少々“つまらない”が真面目な父を誇りに思う。そんな穏やかな日々が、前触れもなく崩れ去った。
すべてを失い、残された道は隠密として生きること。
隠密「夏木新太郎」としてたどりついた父の死の真相とは……。


著者の加藤文さんはドラマのシナリオなどを執筆され、本作が小説デビュー作です。
お父さんは、1985年(昭和60年)に急逝された、時代劇や任侠映画の名監督の加藤泰(かとうたい)さん。往年のテレビ時代劇「隠密剣士」の脚本でも活躍された方です。

本書の時代は文政七年(1824)、舞台は江戸。
山ノ内真之介は、並外れた剣の腕を持ち、前途洋々の若者。ところが、ある日、播磨国深山藩高辻家の江戸屋敷で勘定方をつとめる父は、公金横領の嫌疑をかけられて自裁してしまいます。
父を亡くし、家禄を没収され、すべてを失った真之介の前に、旗本・荻沼良之進が現れます。

「まず、山ノ内真之介殿には、この世から消えていただく」
「えっ?」
「消えるからには、身内であれ、どれほど親しく交わってきた者であれ、もうこの世で会うことは叶わぬ。お主は別人へと生まれ変わり、その身は公儀のものとなる。そして、隠密として働いてもらう」
(『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』P.52より)


一年後、真之介は、隠密・夏木新太郎として、探索の旅に出ます。

真之介の父の死の謎を抱えながら、ストーリーはどんどん展開していきます。登場人物たちのキャラクターも光り、今すぐに映像化できそうな作品です。

■Amazon.co.jp
『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』

加藤泰|ウィキペディア

澤田ふじ子作品を想起させる、京都を舞台にした人情捕物小説

寺内奉行検断状小泉盧生(こいずみろせい)さんの時代小説、『寺内奉行検断状(じないぶぎょうけんだんじょう)』(徳間文庫)を読みました。著者のプロフィールは紹介されていませんが、文庫の帯に「81歳の新人。」と記載された新人作家のようです。

江戸期、京都の東西本願寺は人口1万人の寺内町を形成し、幕府(京都所司代)から、徴税・風紀取締り・犯罪捜査等の自治を許されていた。一旦町中で事件が起きると下手人がどこへ逃げようとも捕縛の許可証(検断状)を得て追及するのだ。寺内奉行所の目付・黒田荘十郎に密命が下った! 丹波篠山から強訴のため江戸に向かった農民が寺内町の旅籠に投宿している。早々に捕えよというものだったのだが……。


本書は、江戸時代、幕府から自治を認められた京都の東西両本願寺の門前町(寺内町)を舞台にそこで起こる事件や人間模様を描いています。主人公の黒田荘十郎は東西両本願寺が設けた寺内奉行所の目付をつとめ、悪質な犯罪捜査に当たっています。

寺内町で犯罪を行った人物は、全国どこに逃げても、寺内奉行の目付によって追捕される特殊性を持っていました。その際に京都所司代から発給されるのが「検断状」で、寺内奉行の目付からこれを示された各藩の奉行所は、即その支配に加わり、犯人の捜査や検挙に当たらなくてはならなくなります。

物語は、連作形式で五編を収録しています。

「丹波の小壺」丹波篠山から江戸の強訴のため、寺内町の旅籠屋に投宿した農民たちを捕縛せよと命が下る。荘十郎は、病に倒れた首謀者の父の代わりに強訴に加わった少年卯之助がいることを知る…。

「愚かな刺客」寺内町で屈指の大店の仏具商の妻千代は次男源次郎を溺愛し、長男源太は気鬱の病があるとして岩倉の療養旅籠に預けっぱなしにしていた。四年前に、荘十郎は千代が侍姿の男と不義密通をしているのを偶然見かけ、仏具商を注意深く見張っていた…。

「仇討ち蕎麦」京の木賃宿に泊まる浪人竹中新蔵は父を斬った相手森田弥兵衛を探して仇討ちの旅に出立してからすでに二十余年。俳句好きの客が句を詠めるようになっている屋台の蕎麦屋があると聞き訪れたところ…。

「冬の鴉」美濃国蘇原村の村年寄から、寺内奉行に早駕籠で手紙があった。村にある浄土真宗の寺が無住のためにならず者たちに住み着かれて、賭博場として使用されている。村娘を人質として取ったり、農夫たちが博打に誘い入れられたり非道を尽くしていているという。一刻の猶予もできぬ事態に、荘十郎ら三人の目付が村に派遣されることに…。

本書の面白さは、ユニークな設定と機動性を持った犯罪捜査もさることながら、正義感と市井の人への人情にあふれる主人公の設定、そして、京都の町の歴史や文化、風習に触れながら物語が展開していく点など、多々あります。

京都への造詣の深さや、「仇討ち蕎麦」でみられる、心温まる人と人のつながりの描写など、読み味がよく、京都を舞台にした時代小説の第一人者である、澤田ふじ子さんの作品を想起させます。81歳という年齢が気になりますが、この作者の次作が楽しみです。

■Amazon.co.jp
『寺内奉行検断状』