「2017年2月の新刊 下」をアップ

本所おけら長屋(八)2017年2月21日から2月28日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年2月の新刊 下」を掲載しました。

畠山健二さんの笑えて泣ける!大人気の文庫書き下ろし時代小説シリーズの新刊、『本所おけら長屋(八)』がPHP文芸文庫から刊行されます。

江戸は本所亀沢町にある「おけら長屋」では、今日も騒動が巻き起こる。
長屋の浪人・島田鉄斎に剣術の手ほどきを求めてきた娘の目的とは。
天下の大関と対戦することになった気弱な相撲取りを勝たせるべく、万造と松吉は策を巡らすが……。
家を出た一人娘と、頑固な父親を再会させるために奔走する万造とお満だったが、二人の心にも微妙な変化が……など、五篇を収録。


古典(江戸)落語のように、長屋を舞台に、ひと癖ある店子たちが繰り広げる騒動の連続に、笑えて泣けて、ジーンときます。傑作人情時代小説シリーズの待望の第8弾、今回もページを繰るのが楽しみでなりません。

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『本所おけら長屋(八)』
『本所おけら長屋』

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将軍就任要請を辞退した、家光の孫が悪を斬る!

将軍を蹴った男 松平清武江戸奮闘記誉田龍一(ほんだりゅういち)さんの文庫書き下ろし時代小説、『将軍を蹴った男 松平清武江戸奮闘記』がコスミック・時代文庫から刊行されました。

次期将軍の第一候補者でありながら、権利をあっさりと放棄した、上州館林藩主松平清武。清武は、三代将軍家光の孫にして六代家宣の実弟という血筋で、直系男子であった。
が、七代将軍家継が危篤に陥った折、年齢や藩政の実績を理由に将軍就任を拒み続ける。これには、清武の真意があった。城に居ては庶民の目線を失う。長屋に暮らしながら悪人退治をしたかったのである。
紀州徳川家から迎えた八代将軍吉宗を市中から支え、享保の改革の片棒を担いだ清武……。


これまで多くの時代小説を読んできたが、家光の孫、家宣の実弟・松平清武を主人公にした作品は読んだことがありませんでした。有資格者に思われるのに、なぜ、将軍に就かなかったのか、疑問が湧いてきます。

「わたしが再興させた折の館林藩のことはよく存じておられるはず」
 天英院が少し目をそらした。
 清武も畳に目を落とすと、再び顔を上げた。
「四十四で松平の姓を初めて賜りました。それまでは、姉上もよくご存じのとおり、甲府藩家臣の越智喜清に育てられ十八の時から越智の家を継いでおりました……」
(『将軍を蹴った男 松平清武江戸奮闘記』P.56より)


七代家継が危篤に陥った際に、家宣の正室天英院は八代将軍の候補として清武を推したといいます。清武が家継の叔父であり、血統的に最も近かったのが理由です。

しかしながら、この時、清武は五十四歳という年齢と、家臣の越智家の家督を継ぎ、四十四歳の時に松平姓を許され、館林藩主となった経歴が将軍にふさわしくないということで拒んだといわれています。

本書では、将軍職への野心よりも庶民の目線を大切にする時代ヒーローとして描かれています。どのような活躍ぶりを見せるか、大いに食指が動く物語の始まりです。

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『将軍を蹴った男 松平清武江戸奮闘記』


「2017年2月の新刊 中」をアップ

あきない世傳 金と銀 3 奔流篇2017年2月11日から2月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年2月の新刊 中」を掲載しました。

角川春樹事務所・ハルキ文庫より、髙田郁さんの文庫書き下ろし時代小説、『あきない世傳 金と銀 3 奔流篇』が刊行されます。

大坂天満の呉服商「五鈴屋」の女衆だった幸は、店主・4代目徳兵衛の後添いに迎えられるものの、夫を不慮の事故で失い、17歳で寡婦となる。4代目の弟・惣次は「幸を娶ることを条件に5代目を継ぐ」と宣言し…。
【「TRC MARC」の商品解説】


タイトルにある「世傳(傳=伝。せいでん)」とは、代々伝わっていくこと。または、代々伝えていくことという意味があります。

本書は、大坂天満の老舗呉服商「五鈴屋」を舞台に、ヒロイン幸(さち)が次々と起こる試練の数々を、向上心と粘り強さ、やさしさで乗り越えていく感動の物語です。
「源流篇」「早瀬篇」に続く、第3弾は「奔流篇」とサブタイトルがつけられています。川の流れのように、いろいろな姿を見せて展開していくストーリーから目が離せません。幸がいかにして傾きかけた「五鈴屋」の窮地を立て直すのか、すぐにも読みたい一冊です。

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『あきない世傳 金と銀 1 源流篇』
『あきない世傳 金と銀 2 早瀬篇』
『あきない世傳 金と銀 3 奔流篇』

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2016年「時代小説SHOWベスト10」文庫1位、待望の第2弾

舞う百日紅 上絵師 律の似面絵帖知野みさき(ちのみさき)さんの文庫書き下ろし時代小説、『舞う百日紅 上絵師 律の似面絵帖(まうさるすべり うわえしりつのにづらえちょう)』が光文社文庫より刊行されました。

父の跡を継ぎ、上絵師として身を立てたい律だが、ままならず落ち込むことも多い。幼馴染みの涼太への想いも、深く胸に秘めるばかりだ。
しかし副業の似面絵の評判は上々で、引きも切らず注文が舞い込んでいた。
そんな折、母を殺めた辻斬りの似面絵そっくりな男に出会うのだが……。


本書は、2016年「時代小説SHOWベスト10」文庫書き下ろし部門1位に選んだ『落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖』に続く、シリーズ2作目です。

 六年前に母親の美和が辻斬りに殺された時、駆け付けた伊三郎は利き手の右手に怪我を負った。傷はほどなくしてふさがったものの、以前のような細やかな筆遣いはできなくなった。
 自暴自棄になりながらも、娘の律の助けを借りて、伊三郎は上絵師であり続けた。事件後は仕上げのほとんどを律が手がけていたが、一見ではそれと判らぬまずまずの作品になっていた。
(『舞う百日紅 上絵師 律の似面絵帖』P.7より)


上絵師は、着物などの布に家紋や模様を描く職人のこと。律が仕上げた作品の未熟さを見抜いて離れた客も少なからず出て、昨年葉月に、伊三郎は川にはまって亡くなってしまいます。
律は、上絵師としての独り立ちを目指して、一回り離れた弟慶太郎と暮らしていますが、若い娘の上絵師ということから、着物や紋絵の注文はなかなか入りません。知人の奉行所同心の依頼で始めた、犯人の似面絵(似顔絵)描きでした。

幾多の困難にぶつかり、落ち込むこともありながらも、一途に仕事に取り組む律を支えるのが、幼馴染みで葉茶屋青陽堂の跡取り・涼太とその妹・香(こう)。
恋に臆病で不器用ながら、前向きに生きるヒロインの姿を鮮やかに描いています。
母を殺した辻斬りの犯人捜しをしたり、似面絵制作を通じて事件に関わったり、謎解きの要素もあって、魅力がいっぱいのシリーズです。

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『舞う百日紅 上絵師 律の似面絵帖』
『落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖』

2016年時代小説ベスト10 文庫書き下ろし部門

帝都叛乱!二・二六事件にかかわった五人の物語

雪つもりし朝 二・二六の人々植松三十里(うえまつみどり)さんの長編小説、『雪つもりし朝 二・二六の人々』がKADOKAWAから刊行されました。

作家である「私」は、国立新美術館を訪れた。そこで軍服姿の不思議な男を見かけた。美術館のある場所は、一九三六年に起こった「二・二六事件」のゆかりの地だった。
帝都叛乱の二月二六日、彼らはそれぞれの夜を過ごしていた……。
義弟が身代わりとなり落命、やがて第二次世界大戦の終戦に尽力した、当時の首相・岡田啓介。
妻のタカが夫へのとどめを制した、終戦内閣の首相・鈴木貫太郎。
弘前から上京した青年将校が要と仰いだ昭和天皇の実弟・秩父宮。
襲撃を受けながら祖父を守り、父・吉田茂を助ける存在になった麻生和子。
事件当時に歩兵部隊におり、やがて『ゴジラ』の監督になった本多猪四郎。
五人それぞれの二・二六事件。


「二・二六事件」は、1936年(昭和11年)2月26日に、天皇親政を目指す、陸軍の青年将校らが千五百名の下士官兵を率いて起こしたクーデター未遂事件。岡田首相、鈴木貫太郎侍従長、斎藤實内大臣、高橋是清大蔵大臣らを襲撃し、首相官邸、警視庁、陸軍省、参謀本部、内務大臣官邸、陸軍大臣官邸、東京朝日新聞を占拠し、2月29日に鎮圧されましたが、日本が戦争に踏み出すきっかけの一つとなっています。

「二・二六事件」を描いた作品としては、宮部みゆきさんの『蒲生邸事件』が思い出されます。
本書は、「二・二六事件」が人生のターニングポイントとなった5人の男女に焦点を当てて5編の物語として綴っています。5人は帝都を震撼させた叛乱に巻き込まれながらも、その後、日本の平和にかかわっていきます。知られぜる彼らの生きざまに興味が惹かれます。
『調印の階段 不屈の外交・重光葵』という昭和史をテーマにした傑作をもつ植松さんが、「二・二六事件」をいかに描くのか、興味津々です。

国立新美術館の場所には、当時、叛乱を起こした兵士の主力を構成する歩兵第三連隊があり、この地から出動していたそう。今度、国立新美術館も訪れた際に、その面影を辿ってみたいと思います。

東京都港区六本木7-22-2


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『雪つもりし朝 二・二六の人々』
『調印の階段 不屈の外交・重光葵』
『蒲生邸事件』

国立新美術館