明治維新後、徳川に連なる人々は、どう生き抜いたのか?

大奥の女たちの明治維新歴史家の安藤優一郎さんの歴史読み物、『大奥の女たちの明治維新』が朝日新書から刊行されました。

明治の世をつくったのは、「薩長」ではなく敗者たちの「悔し涙」だった!!
幕府が瓦解したあと、徳川に連なる人々は、どう生き抜いたのか!?
篤姫の執念、津田梅子の情熱、江戸っ子の心意気、リストラされた旗本・御家人たちの悲喜劇――。
これまで語られてこなかった維新史に新たな光を当て、日本の夜明けの真実に迫る!


今年2017年は、徳川幕府が260年余りの歴史に幕を下ろした大政奉還から150年目の節目の年です。大政奉還を機に、徳川家と大奥は歴史の闇に消えていきます。
本書は、大奥に象徴される徳川方に連なる女性たちや、敗者の側に追いやられた者の維新後の姿を描くことで、教科書では取り上げられなかった、もう一つの明治維新史に迫るものです。

各章の内容は以下の通り。

第一章「篤姫が住んだ大奥とはどんな世界だったのか」では、大奥の実像を紹介するとともに、大奥を去った奥女中たちの足跡をたどります。
第二章「失業した三万余の幕臣はどうなったのか」では、幕臣の大半が徳川家とともに静岡に移住し、苦難の生活を強いられた様子を紹介します。
第三章「将軍家御典医・桂川家の娘が歩んだ数奇な運命」では、姉が大奥の奥女中だった桂川家の娘・今泉みねの生涯をたどります。
第四章「日本最初の帰国子女、津田梅子の奮戦」では、幼児ながら米国に留学し後に津田塾大学の創立者となった津田梅子が、徳川一門の田安徳川家家臣の娘だったことに注目します。
第五章「東京に転居した大名とその妻はどうなったのか」では、廃藩置県により東京に転居した大名たちが、華族に取り立てられ皇室の藩屏と位置付けられる一方、資本家として経済面の近代化を支えた役割などを解き明かします。
第六章「東京の街は、牧場と桑畑だらけになった」では、明治初年の、荒れ野原と化してしまった東京の実像を描きます。
第七章「江戸を支えた商人や町人はどうなったのか」では、将軍のお膝元・江戸の繁栄を担った日本橋の豪商たちが明治の世をしたたかに生き抜いた姿に光を当てます。

著者は、これまで、『「幕末維新」の不都合な真実』や 『幕臣たちの明治維新』、『将軍家御典医の娘が語る江戸の面影』など、多くの著作を通じて、今まで知られることのなかった、明治維新後の姿を次々に明らかにしてきました。
本書では、そうした著作物にも通じる歴史観に、最新の資料研究を加えて、教科書などでは知られることのなかった明治維新の世界を描き出しています。


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『大奥の女たちの明治維新』
『「幕末維新」の不都合な真実』
『幕臣たちの明治維新』
『将軍家御典医の娘が語る江戸の面影』


真田氏も井伊氏も、しぶとく生き抜く「境界大名」の処世術

戦国「境界大名」16家 なぜ、あの家は近世大名として生き残れたのか榎本秋さんの歴史読み物、『戦国「境界大名」16家 なぜ、あの家は近世大名として生き残れたのか』が洋泉社歴史新書より刊行されました。

NHK大河ドラマで注目される、真田氏も井伊氏も、有力な大名に挟まれた「境界大名(きょうかいだいみょう)」。「境界大名」は著者の造語であるが、一地方の小領主ながら、独自の勢力を持ちながら、時に隣接する大名Aに臣従したかと思えば、別の大名Bを盟主と仰ぐ。情勢の変化に合わせて立場を変え、生き残りを模索していた。
実際の境界大名たちはそれぞれに性質が違う事情を負っていて、結末も多様。本書では、江戸時代まで生き延びて近世大名となった16家の歴史と処世術に触れる。


御家断絶から再興を成し遂げる、遠江国井伊氏、出雲国亀井氏、信濃国諏訪氏。
周辺勢力と戦い続けて生き残る、信濃国真田氏、陸奥国相馬氏、肥後国相良氏。
大大名の間を渡り歩いて成り上がる三河国水野氏、奥平氏、肥前国有馬氏、大村氏など、16の境界大名を紹介します。

こうした境界大名の奮闘と悲哀は、時代小説の題材になることも多く、時代小説ファンも興味深く読める話ばかりです。
それもそのはず、著者の榎本さんは、近年「福原俊彦」名義で、『海賊同心、参る!』や『颱風秋晴 平賀源内江戸長屋日記』など、時代小説作品も精力的に発表されています。

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『戦国「境界大名」16家 なぜ、あの家は近世大名として生き残れたのか』

『海賊同心、参る!』(福原俊彦・朝日文庫)
『颱風秋晴 平賀源内江戸長屋日記』(福原俊彦・徳間文庫)


箱根の岡田美術館で、東海道五十三次を巡る

岡田美術館年末年始休暇を利用して、箱根・小涌谷にある岡田美術館を訪れました。目的は、「美術館で巡る東海道五十三次の旅―広重の版画を中心に―」展を見ること。

岡田美術館は、2013年10月に開館した美術館です。実業家の岡田和生さんが蒐集した日本・東洋の美術品を公開しています。
収蔵品の多くは、日本・中国・韓国の陶磁器、近世・近代の日本画です。

全5階からなる岡田美術館の展示面積は、約5,000㎡に及びます。入館すると、エントランスの壁面一面に描かれた巨大な風神雷神図に圧倒されます。しかし、プロローグに過ぎず、1階から3階まで、常設展示を見て圧倒されっぱなしの連続でした。

美術館で巡る東海道五十三次の旅―広重の版画を中心に―今回の旅の目的は、常設展を堪能することだけでなく、歌川広重が描いた東海道十番目の宿・箱根で、東海道五十三次の旅と題した展示を見ること。

広重の代表作、保永堂版「東海道五十三次」は、53の宿場に江戸・日本橋と京・三条大橋を加えた55図からなる人気浮世絵版画シリーズ。
いずれの画も摺りが鮮明でビビッドな色合いで、広重の描く東海道の風景が目の前に広がってきます。

本展では、この55図を一挙公開されるほか東海道の宿場に関連する名所の美術品をあわせて展示しています。
琳派で知られる尾形光琳の弟で、京焼の陶工・尾形乾山の「色絵宇津山(蔦街道)図角皿」は、広重が描く岡部宿と同じ宇津之山をモチーフにしています。
江戸~箱根間は、箱根駅伝のコースとも重なり、正月にピッタリの展示で大いに楽しみました。

神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1


岡田美術館の名を一躍知らしめました、喜多川歌麿の巨大な肉筆浮世絵「深川の雪」が複製画の展示で、実物が見ることができなかったのは少し残念です。
が、普通の美術館2、3館分という圧倒的な質と量の美術品に触れられて、知的満足感はMAXでした。

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『謎解き浮世絵叢書 歌川広重保永堂版 東海道五拾三次』(町田市立国際版画美術館・監修、二玄社)
『乾山晩愁』(葉室麟著、角川文庫)

美術館で巡る 東海道五十三次の旅|岡田美術館


「街道」をカギに、日本史の20の謎を読み解く歴史読み物

「街道」で読み解く日本史の謎歴史家の安藤優一郎さんの歴史読み物、『「街道」で読み解く日本史の謎』がPHP文庫より刊行されました。

なぜ鎌倉は「武家の都」として繁栄したのに、その後、顧みられなくなったのか。どうして小田原は、放生氏が滅亡しても江戸時代に栄えたのか。そのカギとなるのが「街道」だ。本書は、人の往来や物流の大動脈であり、歴史の分岐点ともなった街道の役割に注目して、日本史の20の謎に新たな光を当てるもの。


20の謎とは、以下のようなものです。

・なぜ品川は、江戸・東京の「玄関口」であり続けるのか?
・なぜ街道から離れた小村が、「巨大都市」横浜に変貌したか?
・なぜ鎌倉は「戦場の古都」となり、表舞台から消えたのか?
・なぜ北条氏が滅亡しても、小田原は「戦略拠点」だったか?
・なぜ関所のある江戸時代に、「観光大国」が誕生したか?

本書では、街道と歴史の関係性を踏まえながら、街道から見えてくる日本史の謎に迫ります。関東と関西を結ぶ三つの道、東海道・中山道・北陸道を中心に、東国各地を走る街道に焦点を当てています。三道のほかに、鎌倉街道、甲州街道、日光例幣使街道、三国街道、秋葉街道、善光寺街道、塩街道、美濃街道、北国脇往還、朝鮮人街道……。

日本史の「なぜ」を、「街道」をキーワードに、豊富な写真を交えてわかりやすい語り口で解説していきます。歴史通になれる一冊です。

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『「街道」で読み解く日本史の謎』



新宿歴史博物館で、信州高遠藩の歴史と文化を学ぶ

新宿区立新宿歴史博物館(最寄り駅:四谷三丁目駅または曙橋駅)で開催されている特別展示「信州高遠藩 歴史と文化」に行ってきました。新宿区が長野県高遠町と友好提携して30年、高遠町が合併した伊那市と友好提携を結んで10周年を記念しての展示です。

●新宿区・伊那市友好提携10周年記念特別展「信州高遠藩 歴史と文化」
期間:平成28年9月18日(日)~11月20日(日)
休館日:9月26日(月)、10月11日(火)、10月24日(月)、11月14日(月)
開館時間:9時30分から17時30分
会場:新宿区立新宿歴史博物館
観覧料:一般300円

東京都新宿区三栄町22


新宿という地名の由来である「内藤新宿」は、甲州道中にできた宿場で、江戸時代に信州高遠藩内藤家の江戸屋敷から来ています。内藤家は三万石の小藩ながら、藩祖の内藤清成が家康から、現在の新宿御苑にあたる広大な土地を拝領し、幕末まで保有していました。

信州高遠藩は、保科家(二代)に始まり、鳥居家二代を間に挟み、内藤家八代(幕末まで)が藩主をつとめてきました。特別展では、歴代藩主「保科家」「鳥居家」「内藤家」を中心に、歴史と文化を紹介しています。養子による継承が続いた内藤家の藩主たちがそろって画才に恵まれていて、高い技量が伝わる作品も展示されていて興味深かったです。

高遠藩というと、絵島の配流先として歴史に登場するほか、徳川家光の異母弟の保科正之が二代藩主をつとめたことでも知られています。正之の生涯を描いた、『名君の碑 保科正之の生涯』(中村彰彦著・文春文庫)を読み返してみたくなりました。伊那市観光協会には、「名君 保科正之公の大河ドラマをつくる会」があって、新宿歴史博物館でも署名運動を行っていました。

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『名君の碑 保科正之の生涯』(中村彰彦著・文春文庫)
平岩弓枝作「絵島の恋」~『大奥華伝 歴史・時代アンソロジー』(縄田一男編・角川文庫)


新宿区立新宿歴史博物館
名君 保科正之公の大河ドラマをつくる会