希代の英雄か、偏屈な激情家か。西郷どんの二つの顔に迫る

西郷どんの真実歴史家安藤優一郎さんの『西郷(せご)どんの真実』(日経ビジネス人文庫)が刊行されました。2018年大河ドラマの主人公、西郷隆盛の知られざる人物像に迫る歴史読み物です。

将たる器を備えたヒーローか、それとも毀誉褒貶の激しい劇場なのか? 二度にわたる島流し。三人の妻と五人の子供。明治維新の立役者で、藩内の権力闘争に勝利し、新政府の内政トップに上り詰めながら、西南戦争を機に朝敵に転落――。西郷隆盛の人生は謎に満ちている。


目次
序章 西郷どんは、どんな人物だったのか
第1章 雌伏の日々
第2章 政局の表舞台に
第3章 とことん好かれるか、とことん嫌われるか
第4章 官軍の将として
第5章 薩摩藩消滅
第6章 朝敵への道――西南戦争の謎
終章 西郷伝説と明治維新

『幕末維新 消された歴史―武士の言い分 江戸っ子の言い分』『勝海舟と福沢諭吉―維新を生きた二人の幕臣』『徳川慶喜と渋沢栄一―最後の将軍に仕えた最後の幕臣』など、明治維新により歴史の敗者に転落した徳川家に連なる側からみた「消された歴史」を解き明かしてきた作者が、本書では歴史の勝者側からみた「消された歴史」に焦点を当てています。

明治維新最大の功臣で政府のトップに上り詰めながら、西南戦争を機に賊臣に転落。
西郷の人生を追っていくことで、世間のイメージとかけ離れた顔が見えてきたり、謎に満ちた行動も明らかになっていきます。

西郷隆盛の写真は一枚も残っていません。その容貌は、イタリア人画家キョッソーネによる肖像画や上野公園の銅像からうかがい知るのみです。
西郷の写真をモチーフにして、風野真知雄さんの『西郷盗撮』のような歴史ミステリーも生まれています。

本書は、『西郷隆盛伝説の虚実』(2014年5月・日本経済新聞出版社刊)を加筆修正したもの。

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『西郷どんの真実』
『幕末維新 消された歴史―武士の言い分 江戸っ子の言い分』
『勝海舟と福沢諭吉―維新を生きた二人の幕臣』
『徳川慶喜と渋沢栄一―最後の将軍に仕えた最後の幕臣』

『西郷盗撮 剣豪写真師・志村悠之介』


『文蔵 2017.6』の特集は、小説でよみがえる「近代日本」

『文蔵 2017.6』『文蔵 2017.6』(PHP研究所・PHP文芸文庫)の特集は、電車、政治、経済、技術、文化 小説でよみがえる「近代日本」 です。

文芸評論家の末國善己さんが、《政治家・官僚》国家の危機を救った人物たち、《実業家》一代で財を築いた男の生きざま、《技術・文化》国家的イノベーションへの道のり、《女性》時代を駆け抜けたパワフルなヒロインたち、と4つのテーマで、「すごい日本人」がわかる名作12編をガイドします。

明治時代から太平洋戦争まで、日本の近代化を進めた人物たちの生涯を描いた作品を紹介しています。

戦争屋と世間に罵られながらも大倉財閥を築いた大倉喜八郎の生涯を描く『怪物商人』や、日本の鉄道の父と呼ばれている井上勝の評伝『クロカネの道』の著者・江上剛さんの特別寄稿も掲載しています。

時代小説を通して江戸の時間に身をおくことが多いですが、ときにはその後の世界をのぞいてみることも悪くないなあと思いました。

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『文蔵 2017.6』(PHP文芸文庫)
『怪物商人』(PHP文芸文庫)
『クロカネの道』(PHP研究所)

⇒『文蔵』ホームページ

サントリー美術館の「広重ビビッド」に行ってきました

広重ビビッド六本木ミッドタウンにある、サントリー美術館で開催されている、「広重ビビッド 原安三郎コレクション」(開催期間:2016年4月29日~6月12日、火曜休館)を見に行ってきました。

日本化薬の元会長・原安三郎(はらやすさぶろう)氏の収集した浮世絵コレクションのうち、歌川広重最晩年の代表作である「名所江戸百景」と「六十余州名所図会」を中心とした展示です。

広重の絵の特徴の一つである藍色の美しさと赤色のコントラストが鮮烈な作品を至近で見れました。しかも、「初摺(しょずり)」と呼ばれ、広重と摺師が一体となって色彩や摺りを検討しながら進めていた早い時期のもので保存状態もよく、「ビビッド(VIVID)」という展示タイトルに込められた主催者の意図が伝わってきました。版木の線も摩耗せず、シャープな彫りの線を見ることができ、ぼかしの繊細な表現も確認できました。

ちなみに、需要の増加とともに、摺りの手数を簡略した「後摺(あとずり)」が複数制作されています。時折、広重の代表作で色味の違うものを見かけるのはそうした事情があったんですね。

今回の展示では、大好きな作品「名所江戸百景」は入れ替え制のため半分の作品数でしたが、五畿七道(全国)の68カ国の名所を題材とした、「六十余州名所図会」を一気に閲覧することができ、とても見ごたえがあり、大いに楽しめました。

時代小説に話を移しましょう。
田牧大和さんの『泣き菩薩』では、若き日の広重、定火消同心だったころの安藤重右衛門が描かれています。坂岡真さんの『恋々彩々 歌川広重江戸近郊八景』は、「江戸近郊八景」をモチーフにした短篇集。現代のミステリーですが、高橋克彦さんの『広重殺人事件』も押さえておきたいところ作品です。

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『泣き菩薩』(田牧大和・講談社文庫)
『恋々彩々 歌川広重江戸近郊八景』(坂岡真・徳間文庫)
『広重殺人事件』(高橋克彦・講談社文庫)

原安三郎コレクション 広重ビビッド展|TBS
原安三郎コレクション 広重ビビッド|サントリー美術館


東京国立近代美術館の安田靫彦展に行ってきました

安田靫彦展(東京国立近代美術館)竹橋にある東京国立近代美術館に、「安田靫彦展」(会期:2016年3月23日-2016年5月15日)を見に行ってきました。

安田靫彦(やすだゆきひこ 1884-1978)さんは、ヤマトタケル、聖徳太子、源頼朝、源義経、織田信長、豊臣秀吉、宮本武蔵などの時代の歴史上のヒーローを描いた作品で知られる、日本画家です。

生き別れていた兄、頼朝のもとに、奥州から馳せ参じた義経を描いた屏風画『黄瀬川陣(きせがわのじん)』は、『吾妻鏡』に主題を得た作品。深い古典研究の上に成り立つ、描写の的確さと表現力に目を奪われます。しかしながら、挙国一致の体制下で戦争に向かう時代に、時局画としても高い評価を受け、大政翼賛会国民指導部のポスターにも利用されたという面もあったそうです。

『王昭君』『飛鳥の春の額田王』など歴史上の美女たちを華やかに、たおやかに描き、日本画の奥深さを豊潤さを感じさせます。服飾や装飾品、武具のディテールまで史実に沿って描かれ、彼の描く秀吉や頼朝などは、小さい頃に教科書で見たイメージのままで、懐かしさでいっぱいです。

安田靫彦さんは、平岩弓枝さんの時代小説「御宿かわせみ」(初期のもの)や「はやぶさ新八御用帳」の装画や挿絵画家として活躍された佐多芳郎(さたよしろう 1922-1997)さんの師としても知られています。佐多さんは、エッセイ集『風霜の中で―私の絵筆日記』で、安田さんとの思い出を綴られていました。

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『安田靫彦』(日本アートセンター編・新潮日本美術文庫)
『風霜の中で―私の絵筆日記』(佐多芳郎・中公文庫)

安田靫彦展|東京国立近代美術館


安藤優一郎さんの『幕末維新 消された歴史』が日経文芸文庫より刊行

幕末維新 消された歴史歴史家の安藤優一郎さんの『幕末維新 消された歴史 武士の言い分 江戸っ子の言い分』が日経文芸文庫の一冊として刊行された。

「薩摩・長州が倒幕を藩の方針として掲げたことは、驚くべきことに一度もないのである」

いったい幕末とはどんな時代だったのか。とくに幕府が倒れるまでの五~六年の間に、政治の舞台で何か起きていたのか。本書では、(権力闘争の勝者側から描かれた)正史では記述されることのない歴史の真実の数々を明らかにしていく。