懐に時代小説、心に日本刀
『武道通信』十ノ巻 特集:時代小説礼賛!について
発行:(有)杉山頴男(ひでお)事務所
編集長:前田日明
「武道通信ホームページ」
E-mail:budoh@gc4.so-net.ne.jp
(TEL.042-580-6428/FAX.042-580-6438)
2000年4月15日、首都圏の大型書店で発売
A5判・130ページ
952円+税「武道精神ヲ以テ 今日ノ日本ヲ生キル」をテーマに隔月で刊行されている雑誌『武道通信』の十ノ巻で、時代小説の特集が組まれました。『武道通信』は、リングスなどで活躍された総合武道家の前田日明さんが編集長を務める硬派の武道雑誌です。
3月、「時代小説SHOW」のゲストブックで、編集・発行人の杉山頴男さんから時代小説の特集を組むので、原稿をと声をかけていただき、図々しくも二つ返事で拙文を書かせていただきました。その昔、仕事でつらかった時期に、藤沢周平さんらの時代小説とUWFで活躍されていた前田日明さんらのファイトに、癒され励まされていたことを思いだし、少しでも恩返しができればといった心境でした。
杉山さんからは、「時代小説賛歌、そして時代小説SHOWのホームページを立ちあげた理由に触れていただきたい。そして、ホームページに投稿する方々の人気時代小説、また理流さんの視点を交えて、時代を室町から幕末に定め、武士、忍び、股旅ものに絞り、掲載書籍リストにあります、カテゴリーの伝奇、捕り物、歴史ミステリー、市井を外し、大まかな時代区分にそって作品(著者名も)の時代小説年表をお願いしたい」といった原稿の趣旨を説明いただき、「時代小説羅針盤」といったタイトルの原稿を書かせていただきました。
でき上がった掲載誌を送っていただき、目次を見て、錚々たる執筆陣の中に、自分の名前を見つけて、いささか面映いところですが、それ以上に、他の記事が興味深くて一気に読み進めました。
- 目次
- 論客談言 西郷隆盛の遺訓 津本陽
前田日明編集長対談 論客・津本陽
「歴史の流れよりも男の夢を追う」
- 特集 時代小説礼賛―懐に時代小説、心に日本刀
- 語り継ぐ剣の思想 秋山駿
- 天然理心流の秘伝 平井泰輔
- 『蝉しぐれ』の剣戟 小川武
- 時代小説羅針盤 理流
- 蘇れ! 日本刀 藤岡弘
- 日本男児の理想と正義 三浦実
- 剣客、秘伝のこころ 杉田幸三
- 武士の妻―「大名の女腹切り」 梅本育子
鎖鎌は日本独特の「フェイク」だった 齊藤浩
トルコ―百年越しの民族感情 小杉英了
武道の中の日本 覚悟と作分 松岡正剛
刀剣講話 日本刀が蘇る日 高山武士
中学生でもわかる兵法 「勝つ」とは? 最終的な「勝利とは」? 兵頭二十八
日本の美意識 おりかがみ 風柳祐生子
侍の作法と嗜 第三十四項 名和弓雄
武道家のための日本武道医学(十) S・パリッシュ
現代版『聖中心道肥田式強健術』(七) 恩蔵良治
日本伝柔術の世界(十) 小佐野淳
武道格闘技事典(九) 編集部・構成
目次でまず目を引いたのが、天然理心流の第十代の平井泰輔さんの「天然理心流の秘伝」。『燃えよ剣』の通説「道場試合に弱い」わけや天然理心流の開祖・近藤内蔵之助はお庭番だったという論を開陳。新選組を理解する一助になるかも。また、神道無念流剣術第十代の小川武さんが、古武道家の眼で、藤沢周平作品の名作『蝉しぐれ』の剣戟シーンを解剖する企画も、『武道通信』ならではといったところで、剣の奥深さを感じさせます。作家の梅本育子さんの書かれている、松平安芸守吉長夫人節子の切腹の話や、戦国・江戸・明治期の剣客219人のデータベース『精選日本剣客事典』(光文社文庫・絶版=古本で見つけられた方は絶対「買い」です)の著者である、杉田幸三さんの時代小説剣客列伝など、面白く読ませていただきました。
文芸評論家の秋山駿さんの時代小説論や、抜刀術の名手でもあり、仮面ライダー1号の藤岡弘さんの時代劇と武の精神性に触れた文章もあります。
本を見て、「しまった」と悔やんだことが一つあります。それは、自分の原稿の中で津本陽さんについて触れることができなかったことです。津本作品については、強者の歴史小説のイメージが強くて、数作しか読んでおらず、氏の代表作といわれているものについてもほとんど読んでいない状態だったので、外しておりました。巻頭の前田日明さんと津本陽さんの対談を読んで、氏の視点が歴史の流れよりも一人の男の生きざまに向いていることが伝わり、認識を新たにしました。今後しばらく、津本陽さんの作品を追いかけてみようと思います。
下版後の4月、桜が満開の頃、国立で、発行人の杉山さんと初めてお会いする機会がありました。編集部との原稿のやり取りはメールとファクスで行っていたので、どんな人だろうかといろいろ想像していましたが、編集者というよりは古武術の先生といった様相でした。当日は、弓道道場帰りといういでたちも関係しますが…。ベースボールマガジン社に長くおられて、「格闘技通信」の編集長もされていたということで、前田さんとの交遊ももその関係からとか。6月中旬からは、インターネットで『武道通信』の記事が読めるようになるということです。こちらも期待してください。