大地震、大火、大雪、御家騒動。藩を守るため戦った小栗美作

雪に咲く村木嵐(むらきらん)さんの『雪に咲く』がPHP文芸文庫から刊行されました。

江戸に幕府が開かれて五十年余り。後に越後高田藩筆頭家老になる小栗美作は、大地震の後処理で手腕を発揮し、藩主・松平光長の信頼を勝ち取る。しかし光長の嫡子が亡くなると藩内は二つに割れ、御家騒動へと発展。そんな高田藩を取り潰そうと幕府は虎視眈々と機会を窺っていた……。


寒波が襲来して、日本海側を中心に雪が続いています。東京でも日陰では先週降った雪が残っていています。雪に打ち克つような本を読みたいと思い、この本を手にしました。

主人公は、越後騒動の中心人物、越後国高田藩の筆頭家老小栗美作(おぐりみまさか)です。
藩主の松平光長は、家康の次男秀康を祖とする越前福井藩の2代藩主松平忠直の子で、忠直が乱行を理由に改易になった翌年に、越後高田26万石が与えられています。
将軍家の兄筋で本来なら将軍を継ぐべき立場にあって、制外(幕府の処罰対象外)の家という意識を強く持っていました。

物語は、慶安三年(1650)、父忠直が配流先で亡くなり、藩主光長に引き取られた三人弟妹(市正、大蔵、お閑)と、美作や同じ家老の嫡男の荻田本繁、片山主水らが御目見をするところから始まります。

その場で、美作は、光長にお閑を妻にほしいと願い出て許されます。
家康の血筋であるお閑と夫婦になったことで、美作のその後の人生が大きく変わっていきます。

「雪国は頑固者が多いと聞く」
 高田は一年の三が一を雪に閉ざされる。そのあいだは土も日差しも見ることができず、他国で何が起きても音さえ届かない。雪のないときでも、江戸までは早飛脚で三日もかかる。
「越後には、およそ頑固者はおりませぬ。ただ辛抱強いだけでごあいます。こたびも必ず、城下はすぐもとに戻ります」
 我を通していては、あの雪は掻けない。高田には降るぼた雪はすぐ根雪になるが、遠くの峰が白く染まりはじめると、来るなら来いと腕が鳴る。見渡すかぎり雪に埋められても、高田では黙々と雪を掻いて春を待つ。
(『雪に咲く』P.80より)


美作は、高田を襲った大地震の復興のために幕府から五万両を借り受けたり、河村瑞賢を招いて行った用水路の開削と新田の開墾、直江津の港の整備を行なったり、藩政で大いに治績を挙げた有能な家老でした。

その一方で、藩主の妹を娶って豪奢な生活をしていたことや、藩士の禄を地方知行制から蔵米制に改めたり、実力本位で家臣を登用したりしたことから、評判を悪くして、重臣たちを中心に「御為方」という反対勢力を藩内につくるようになりました。

藩を守るために次々に降りかかる難題に対峙する美作。同じ家老で朋輩の荻田本繁との友情、制外の家・高田藩を監視する酒井雅楽頭の女間者も絡んで、物語はクライマックスの越後騒動に。

雪の中に見事に咲いて散った花に、不覚にも感動の涙がこぼれました。

◎書誌データ
『雪に咲く』
著者:村木嵐
中央公論新社・PHP文芸文庫
第1版第1刷:2018年1月23日
(単行本『雪に咲く』2013年12月 PHP研究所刊)

装画:ヤマモトマサアキ
装丁:芦澤泰偉
解説:細谷正充

●目次
第一章 銀の雨
第二章 春、東西
第三章 高田大地震
第四章 猫じゃらし
第五章 雁木道
第六章 騒動
第七章 冬ふたたび
第八章 雨の降る

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『雪に咲く』(村木嵐・PHP文芸文庫)