江戸の怪異を、話題の女性時代小説家たちが描くアンソロジー

あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選文芸評論家の細谷正充さんのセレクションによる、『あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選』がPHP文芸文庫より刊行されました。

病弱な若だんなのために特別に注文された布団から夜な夜な聞こえてくる泣き声の正体(「四布の布団」)、のっぺらぼうの同心のもとに持ち込まれてきた、奇妙な女からの訴え(「あやかし同心」)、「百物語」の場に来た少年には、可愛らしい少女の姿をした神様が憑いていた(「逃げ水」)など、妖怪や怪異を扱った短編六作を収録した時代小説アンソロジー。


編者の細谷正充さんに解説によると、本書は単に女性作家の作品を並べただけでなく、二つの趣向を凝らしたそうです。

一つは、歴史・時代小説の分野で、女性作家の活躍の場を大きく広げるエポックとなった、宮部みゆきさんを柱にしながら、比較的デビューの若い作家の作品を中心にしたこと。
もう一つは、『あやかし』というタイトルにあるように、怪異や妖怪を扱った、時代ホラーの傑作を集めたことにあります。

アンソロジーの収録作品は以下の通り。

「四布(よの)の布団」畠中恵
ご存じ「しゃばけ」シリーズの一編。

「蛼橋(こおろぎばし)」木内昇
『漂砂のうたう』で第百四十四回直木賞を受賞した木内さんの短編。(「こおろぎ」は「虫」へんに「車」)

「あやかし同心」霜島ケイ
『のっぺら あやかし同心捕物控』で時代小説デビューした作者のシリーズ第一話。

「うわんと鳴く声」小松エメル
『一鬼夜行』シリーズで人気の作者の、「うわん」シリーズの第一話

「夜の鶴」折口真喜子
与謝蕪村が見聞した怪異を語る『踊る猫』に収録された連作の一篇。

「逃げ水」宮部みゆき
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』に収録された一篇。

バラエティに富んだ作品で、笑って泣いて、恐怖する、江戸ホラーが大いに楽しめます。

なお、PHP文芸文庫では、本書刊行後も、『なぞとき 〈捕物〉時代小説傑作選』(2018年1月初旬)、『なさけ 〈人情〉時代小説傑作選』(2018年3月初旬)と、宮部みゆきさんを中心に、現役バリバリの女性時代小説家の競演による時代小説アンソロジーを刊行されるとのこと。

最前線で活躍する女性作家たちの作品の面白さ、魅力が良いとこどりできます。
未読の作家であれば、これらの「時代傑作選」シリーズから、個々の作家の長編やシリーズに入っていくといいですね。

私も、早速、霜島ケイさんの『のっぺら あやかし同心捕物控』をポチっとしました。

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『あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『ぬしさまへ』(畠中恵・新潮文庫)
『のっぺら あやかし同心捕物控』(霜島ケイ・廣済堂文庫・Kindle版)
『うわん 七つまでは神のうち』(小松エメル・光文社文庫)
『踊る猫』(折口真喜子・光文社文庫)
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』(宮部みゆき・角川文庫)