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江戸妖怪小説の新星、現る!三味線をかき鳴らして魔物退治。

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ざしきわらわら 猫手長屋事件簿仲野ワタリさんの『ざしきわらわら 猫手長屋事件簿』(白泉社招き猫文庫)は、ぐうたら大家と祓い猫が江戸の魔物退治を退治するシリーズ第2作です。

代三郎は、仕事もせずに一日中好きな三味線ばかり弾いているぐうたらな大家。しかし、その一方で、故郷の郷神・大猫様から江戸に跋扈する「魔物退治」を任じられ、一匹の猫・栗坊と三味線を授けられていた。
近頃江戸では、断食療法が流行っていた。札売りから札を買って、五日間断食を続けると座敷わらしが居着いて、商売繁盛するという。ところが、断食療法で亡くなった人がでて、代三郎と栗坊は事件の真相を探るべく、奔走する……。

代三郎は、江戸の西にある猫手村で製茶業を営む実家から、神田の長屋と茶屋を託された二十二歳の若者です。朝から晩まで好きな三味線を弾いているか寝転がっているかのぐうたらな生活を送っています。

七歳のときに、猫手村の池で溺れかけたところを郷神の大猫様に救われ、なりゆきで江戸の魔物退治を請け負うことになっています。飼い猫の栗坊は、必要に応じて人の姿に変わり、備えた霊力で魔物と直接戦ます。そして、かつて大猫様が倒した化け猫の皮でつくった三味線は、代三郎が弦を鳴らすことで魔物の力を封じたり、相手と戦う栗坊にさらなる力を与えることができます。

「札を貼ったら座敷わらしが居着くなんてことあるのか?」
 そう問う代三郎にマルメは「さわてな」と肩をすくめてみせる。
「地蔵菩薩様がどうのと言っていたな。もし本当に地蔵菩薩様が関わってんのなら、座敷わらしの誰かが手伝っているってことはあるのかもしれねえ。家に居着くんだったら、断食だとかそんな意味のねえことは端折って居着きそうなもんだけどな」
「銭がからんでいるのが気に食わねえな」

座敷わらし(奥州に棲む精霊)たちは、参勤交代の武家や商いの旅人たちと行をともにして江戸に暮らしていました。代三郎が自分たちを「正しく見える」ことを知り、代三郎の茶屋にお茶を飲み、世間話などをしにくる親しい関係になっています。その座敷わらしが事件に巻き込まれるということで、代三郎は立ち上がります。

魔物との対決では、座敷わらしたちも加わり、ハチャメチャな戦いぶりにニヤリとさせられます。前作『ふぬけうようよ 猫手長屋事件簿』の腑抜けの魔物もスラップスティックな面白さがありましたが、今回もイマジネーション豊かで、個性的な登場人物たちとともに映像的なシーン展開が楽しめました。新しい江戸妖怪ファンタジー小説の誕生です。

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『ふぬけうようよ 猫手長屋事件簿』
『ざしきわらわら 猫手長屋事件簿』

→白泉社招き猫文庫|既刊情報